第四話   現代パラレル


 以来、伊達は直江と身体的接触が増えるんだ。まあ、気づくと手が触れてたりとか、もたれてたりとか、そういうちょっとだけの変化だけど。少しでも触れてると、安心するんだな。
 そしてバレンタイン。
 このころは、孫市のバイト先の店長がお年がお年なこともあって倒れて入院しててね、孫市がバイトなんだけど一番の古株ということもあって、店長代理になってる(最終的には雇われ店長になる。)。孫市も任されたもんだから表面上はひょうひょうとしてるけれど、実は張り切っちゃってて、しかも女好きなこともあってバレンタインフェアとかするんだ。女性限定のチョコレートケーキとか、半額フェアとか。そのフェアは夜のバーでやるので、昼間、その試作品(というか最終決定版。孫市自信の一品。)のチョコレートケーキをたまり場に来てた伊達とか直江とかが食べさせられて。甘いもの大好きな左近はめちゃくちゃ絶賛しててもうすでに数個食べてて、甘いもの苦手な三成は半分食べて左近に残りをあげて(けいじはまた旅に出てる。)。学校帰りに来た生徒会長な伊達は学校でたくさんもらったチョコレートを鞄いっぱいに詰めてて、それを左近にあげるのだった。猫とか愛とか、知り合いからもらったチョコは自分で食べるけど。仕事帰りの直江もそれなりにチョコを持ってきてたんだけど、職場の年配の女性からのものが多い。おばちゃんに好かれるんだね。直江は美形だし天然のたらしだから本当はもてるんだけど、ていうか実際もててたんだけど、大学時代と就職後で数人と付き合ってみたんだけど、どうも生活がきっちりしてて掃除好きだし下手な女より家事できるし、家事にもうるさそうだしってんで、敬遠されてるのだ。結婚できない男。
 伊達は愛や猫といった修学旅行の班の女の子から直江宛に持たされたチョコを直江に渡して、孫市自慢のチョコレートケーキを食べて。
 そこに、真田が登場。…女連れ?!


 あの真田に彼女ができたのか?!と周囲はびっくりするんだけど、それは武田家にお世話になってるくのいちで、来年からこっちで女子大生になるので色々土地案内をしてもらっていたのだった。真田に。
 まあありきたりといえばありきたりな回答に、なんかびっくりして損した気がする三成はぶつくさ文句を言うんだけど、1言えば2返ってくる、3返せば4返ってくるという感じでくのいちと三成との間で口げんか勃発。初対面なのにこれでいいのか、という感じなんだけど、真田は大して気にした様子もなくむしろ「さっそく打ち解けたみたいでよかった。」とか呑気なことを言いながら、席についてチョコレートケーキに舌鼓を打つのだ。
 話の流れには関係ないけど、くのいちは稲姫の在籍してる女子大に来年入学するんだ。稲姫は幼稚園から大学までエスカレーター式のお嬢様学校に通ってて、高校で編入してきた先輩の立花にばりばり「お姉様…!」とあこがれてて。まあ、本気で話の流れには関係ないな。稲姫と真田のお兄さんは家庭教師と生徒の関係だったのかな。そして家康がお兄さんを気に入って、稲姫とのつきあいを勧めた。本当に話の流れに関係ないな…。


 まあ何はともあれ、そのまま三成とくのいちの仲がよい(…?)しってんで、けいじが旅でいないし孫市もバレンタインフェアで無理だけど、くのいちの歓迎会をすることになるんだ。というか、正直呑む口実が欲しいだけだけど…!週末で、伊達はどうせ暇だったし、直江も仕事は休みだし、くのいちが行くなら真田もいないとということで全員参加することになり、途中でつまみや酒を購入して。
 珍しいことに、左近の家で呑むことになるのだ。
 左近は何の仕事をしてるんだかよくわかんないんだけど(たまり場に常にいるような勢いだし。)、左近の家に着いてみたらすっごい金持ちそうなマンションで、ホームバーとかついてるし、なんだここは!という感じ。左近稼いでるな…!
 左近がわざわざ家をお披露目してまで今回帰ってきたのは、食べようと思って買ってきたバレンタイン限定のチョコレートケーキが冷蔵庫にあったからなのだ。あとは、前回のクリスマスの飲み会で、三成を直江宅に放置してきたのがちょっと気に掛かっていたから。
 三成はよく来ることもあって勝手知ったる様子で冷蔵庫とか開けたりして、ワインも開けたりして、カクテルとか左近に作らせたりして。カクテルに興味を持ったこともあって、くのいちも調子に乗って呑んじゃう。そして、三成と意気投合する。こうしてみると意外に気が合う二人であった…。
 三成とくのいちがタッグを組んで真田や直江に絡んでる間、さすがに呑まない(呑めない)伊達は左近と話をするんだな。いろいろ。クリスマスの三成の行動の謝罪を左近がしたりして、それからその話の流れで結局伊達は直江とはどうなっているのか左近が聞いたりして。すぐ近くに三成や直江もいるんだけど、こっちの話を全然聞いてる様子はないから安心して(?)会話するのだ。「酔ってるあの人たちにはもったいない。」と、伊達と左近と二人で限定のチョコレートケーキを食べたりしながらね。
 結局何もないことがわかったのだけれど、同性だからというのもあるかもしれないけど、まあ直江も堅いというか律儀というかな人物だし、高校生だからか伊達もそんな積極的にアプローチするわけでもないし。一応これでも上々か、と左近は思うのだった。
 隣では、馬鹿騒ぎ進行中。


 左近はこの日珍しく呑んでなかったから、車で真田とくのいち、直江と伊達のペアたちを送り届ける役目に。ていうか送り届けるために呑まなかったんだけど。くのいちは仮にも女の子なわけだしね。
 三成はマンションに置いたまま、直江宅に直江と伊達を下ろして、左近は真田とくのいちを送り届けるためそこで別れるんだけど。三成だけならまだしもくのいちも加わったアルハラ(…)に、直江はぐでんぐでん。これは明日、完全二日酔いだ。真田という生け贄仲間がいたにはいたけれど、それでも、直江真田の防御力が足し算なのに対して、三成くのいちの攻撃力がかけ算だったから駄目だった。真田は手加減されてた感があって(左近が「真田さんはくのいちさん送るんですから。」と助けてあげたりしてね。)、そのつけがまた直江に来たもんだからたまらないあ。
 ふらふらしてる直江が階段転げ落ちないように伊達は支えて、直江の部屋について、アルコール覚ますために水出してやったりして、直江はベッドに寝かせることにして自分用の布団も敷いて。直江はその間テーブルに突っ伏してる。駄目男再来?シャワーはどうしたものかと酒を呑んだことのない伊達は酒臭い直江に勧めるべきか悩むんだけど、自分は浴びることにして一言告げて着替えを借りて。浴びて戻ってきたら、まだ直江はテーブルに突っ伏してる。水出したコップはかろうじて空になってるけど。
 寝るならテーブルじゃなくて布団で寝ろ、と伊達が直江に告げると、直江はうーとか言いながらのろのろ顔を上げる。三成もこんなに呑ませおって、と伊達は内心あきれるやら何やらなのだけれど、表面上は優しく布団を勧めてみる。


 現在駄目男な直江はぼーっと伊達を見つめて(眺めて)、伊達のまだ濡れてる頭にさわるんだ。シャワーを浴びてきたばかりの伊達は正直直江が酒臭いから勘弁して欲しい気もするんだけど、直江に触られるのが好きなのでじっとしてる。まあ、口では「撫でとらんでさっさと布団で寝んか。」とか言ってるんだけど。
 直江はしばらく伊達の頭を撫でてて、それから満足したのか立ち上がるんだけど、ふらふらしてるから案の定よろけてしまい、伊達があわてて支えるのね。
 小さい伊達は少しよろけるんだけどそれでもどうにか直江を支えきって、直江は現在駄目男というか酔っぱらいだから、伊達が直江のせいで苦労してる事実なんて知らないで、伊達がすぐそばにいる事実(抱きついてる)だけぼんやりと認識してる。
 現状はよく把握できないながらもとりあえず伊達が抱きついてる(誤認です。)事実が嬉しい直江は、のろのろした動作で伊達をぎゅううと抱きしめて、伊達の頭にほおずりしたりするんだな(それって、どんだけ伊達は小さいのか。)。伊達は困るやら焦るやら重いやら酒臭いやらで正直対応に困るんだけど、ていうか直江に甘えられてるのも悪くはないというかまんざらでもないというか嬉しい気もするから、それこそ本気で対応に困る。とりあえず伊達は「直江…、」と直江の顔を見上げて名前を呼ぶんだけど、それを違う方向に勘違いした直江は「うんー?」とか間延びした返事をかましながら、(状況上、否応なしに)上目遣いの伊達にちゅうしたらいいと思う。
 初めてのちゅうにびっくりする伊達はそれでも拒まないんだけど(触れるだけのキスだし)、伊達が拒まなかったことか伊達にキスしたことか、ともかくそれで機嫌が良くなってきたのか直江がにこにこ笑いながらなおさらぎゅうって抱きしめてくるんだ。抱きしめるっていうか、抱きつく?伊達は照れるやら恥ずかしいやらおもはがゆいやら、どう対応したらいいものかそれこそわからないけれど、まあ、流れ的なもので直江の背中に手を回し返してぎゅってし返して、ぽんぽんと背中をたたいて、それから直江を宥めすかしてベッドに連れて行って、寝かしつけるんだ。
 そしてどうにかこうにか寝た直江を見つめながら、なんかむやみやたらと疲れたなあと思う伊達だった…。
 ていうか酔っぱらうと三成も直江もどんだけ性格が変わるのか。左近は甘党だし。


 直江は起きたら二日酔いでがんがん頭が痛いし気分も悪いしですごい苦労するんだけど、それでも記憶は確かで、夜伊達に迷惑かけたこともキスしたこともきっちり覚えてる。風邪の時と一緒だ。当然のように伊達は直江よりも先に起きていて、あきれた様子ではあるけれど二日酔いの直江相手にかいがいしく世話を焼いてくれて。直江は礼と謝罪両方告げるんだけど、正直、キスしたことに関してはどう触れたものか悩んでしまう。拒まれなかった、けど、酔っぱらいの仕業だからと思われて許されたのか、それとも一応両思い的な感じだからしちゃっても良いのか。わからない…わからないな。まあ、直江は頭がガンガン鳴ってるように痛いから、考えがまとまるわけもないんだけど。
 (通常の犬猿であれば伊達が仕返し的にキスをやり返すんだろうけど、なんかそういう感じでもないし、さてどうしたものか…。)
 内心悩みに悩んでいる二日酔い直江と連れたって、伊達とたまり場に行くと、案の定二日酔いの真田と三成もいるんだな。くのいちだけは、左近が気を配ってたこともあって(初めてのお酒だしね。)むやみやたらと元気。そしてその元気が、二日酔いの連中には堪えるんだ。頼むから…、もう少し静かにしていてくれ…声が頭にがんがん響くんだ…みたいな。
 まあ飲み過ぎちゃって、という感じで孫市や左近は呆れてて、こっちの方に伊達も加わるんだけど。何か二日酔いなりに真剣に悩んでいる風な直江の様子に、敏いし二日酔いでもない左近は気づいて、何かあったのか、孫市が二日酔い連中に二日酔いさっぱりメニューを作りに行ってあげてる間に伊達に尋ねるんだ。伊達はちょっと「あったと言えばあったような…、なかったと言えばなかったような…?」と言葉を濁す(というか伊達も、あれが酔っぱらっての行動なのか違うのかよくわかってない。)のだけれど、「大人として何かアドバイスできるかもしれませんよ?」とか口も巧く左近が探りを入れてみると、三成と違って左近に対してはそれなりに伊達も信頼を寄せているので(三成も信頼してるけど、三成は協力よりおもしろがってる割合の方が高いから。ちょっと…。)、夜何があったか言うんだな。
 そして左近は返答に困り、うんうん唸ってる直江の方を見やるのだった。伊達も一緒に。ちなみに、二日酔い連中はこっちの会話には全然気づいてない。大人で経験値もかなり積んできた気がする左近も、ちょっとそういう初々しすぎる恋愛というか、へたれすぎる直江の行動にというか、まあ困って、とりあえず伊達はどう思ってるのか尋ねてみる。別に嫌じゃなかったという伊達の返事に、「異性だったら美味しい出来事だった、とかですませられるかもしれませんけど。同性相手じゃ嫌悪こそすれ、別に嫌じゃないという結論には至らないと思いますよ。それに、いくら酔っぱらってたって、直江さんみたいなお堅い人間がその気もないのに酔っぱらったというだけの理由でキスすることもないでしょうよ。」と言う。というか、左近にはそれくらいしか言えないよ…!「そうか…。」伊達はとりあえず納得したのか否かよくわからないけど、まだうんうん唸ってる直江の方にまた視線を向けて。
 「まあとりあえず何だったら、今度は伊達さんの方からしてみたらどうですか?」と提案しつつ、左近は難儀な二人だなあと思うのだった。


 2月15日、その日はそれで別れて…、そして卒業式の準備やらで生徒会長の伊達は忙しく。気づけば1月が経っていた。3月14日、ホワイトデー。
 高校も無事卒業してさっさとこちらに引っ越してきたくのいちは(防犯上、真田の隣に住んでる。)、バレンタインのお返し(?男女逆だろ!)にクッキーとか持ってくるんだ。引っ越しのご挨拶もかねてそうめんもセットで、何だこれは…という感じではあるけれど(クッキーとそうめんって…。)。そして、くのいちもお楽しみの(…)、歓迎会パート2に。今度はけいじもいるよ。孫市もバイト夜は休みだったから、一緒に。
 今度は前よりも人数が多いので、また、左近の家に。
 しかし今度はつまみを作ったりするのは主に孫市の役割で(こんなのばっかだ。)、ばかばか呑む慶次には「お前勝手に呑んでろ!」と焼酎の大瓶ごと押しつけたり、三成とくのいちが慶次に絡む(というか慶次は酒豪だから、全然呑まされても大丈夫!)ので真田と直江も安全だったり。
 伊達もあと一ヶ月もすれば高校三年生、受験生なんだね、という話になり。そこに「あたしとたった一年違いなんだから大丈夫大丈夫☆」「そうだな。伊達ももう酒くらい呑めねばいつもつまみばかりでもつまらんだろう。」とかって、勝手にオレンジジュースの入ってたコップに酒を混入。マンゴヤン。ノンアルコールのカクテルを孫市や左近が前回・今回と作ってくれていたこともあって、酒だと気づかないで呷る伊達。伊達にも周囲にも気づかれないもんだから、どんどん入れていく三成とくのいち。本当、この二人仲がいいなあ。
 しかし悪事というものはばれるもので、伊達の顔が赤くなってて、しかもなんかぽやーっとしてるから、不審に思った孫市が首をかしげて、「!それ酒じゃねえか政宗!」とコップの中身に気づくのだった。左近にこってりくのいちと三成はしぼられる(んだけど、酔っぱらいだからのれんに腕押し、みたいな感じで効果はない。)間、伊達は孫市にノンアルコールを飲まされるんだけど。たぶん、孫市は伊達が小さいときから知ってるから、子どもって感じが他の人以上にするんだろうね。慶次は「まあいいじゃあないか。もう高三になるんだろう?」とか言うんだけど、孫市は「何言ってるんだ!まだ高3だ!」とあたふた。
 真田と直江ははてさてどうしたものかと、顔を見合わせてる。


 伊達は酒が強くてね、叱るのに意味がなさそうだと判断した左近がちょっと調べてみたらマンゴヤンやらカルーアやらフィズやらジュースと間違えそうなアルコール系がすっからかんになってるの。酔っぱらいの行動は果てがなくてすごいね、常識逸脱。道理でふらふらしちゃってるわけだよ、とお茶呑まされてる伊達に、「あれだけ呑んで、これですか。まあ、伊達さんが酒が強いみたいで本当によかった。」と左近は感想を述べて、それは未成年が急性アルコール中毒でぶっ倒れて病院に運ばれてしょっぴかれたりしたら(伊達自身にも周囲にも、伊達が生徒会長の高校にも)大変だからという理由からなんだけど。
 とりあえず、伊達を帰らせることに。本当だったら孫市が引き取るところなんだろうけど、伊達が直江にべったりで離れたがらないので、直江に預けて帰すのだった…。孫市は心配だけどまあ直江なら大丈夫かな、と。三成は「あの二人…何があるかわからんぞ?」とかことの成り行きをおもしろがって、反省の色なしと判断されて孫市にまた怒られるんだ。
 今回はみんな酒呑んじゃったから、伊達と直江は徒歩で直江のマンションへ。直江は今回はそれほど呑んでないから、伊達を支えて。
 バレンタインとは立場逆転。まあ、とはいえ伊達は小さいし体重も軽いし、体格のそれなりに良い直江は大した苦もなく部屋までたどり着くんだけど。
 部屋に着いてからは、伊達にノンアルコールを飲ませて、布団も敷いて、伊達が離れたくないとごねる(ねだる?)からついでに直江の分も布団を敷いて、伊達にパジャマに着替えさせたり歯磨きさせたり寝る準備させて、二人で並んで寝るのだ。(あれ?カップリングにならな…)
 相手は酔っぱらいだし直江の方は何をする気もないのだけれど、伊達が甘えたがりで(たらふく呑んだから。)、手をつないでてっていうから最初は手をつないでたんだけど、それで気をよくしたのか伊達が直江にぎゅうってしてくるのだ。まあ、直江はだからといって大人だしお堅い性格だから、子どもで酔っぱらいの伊達相手に何かしちゃうこともないけど。


 伊達が現時点で直江にぎゅうって抱きついてるわけだけど、伊達はバレンタインに何していたかきっちり覚えているわけで、かつ伊達は現在甘えたがりの接触したがりなわけで、き、キスを…(書いてる私が恥ずかしくなってきた…!←また?)
 当然びっくりするのは直江で、理由を尋ねて良いものか、いやしかし相手は酔っぱらいだし何か考えがあってのことではないのかもしれない…!と思いつつも、でもそれで結局バレンタインの日直江自身はうんうん唸って悩んでたことを思い出して、理由を尋ね
 理由を尋ねたところ、「直江はしたであろう。お返しだ。」みたいな。…本気で何を書こうとしていたのか覚えてないな…。
 まあともかく可愛い伊達の様子に直江がめろめろきゅんになって、でも根性ないというか男だから酔っぱらいかつ子どもな伊達には手は出さないで、ぎゅうって抱きしめられながら寝やがれちくしょう。本気で何を書こうとしていたんだったか…!
 朝起きた伊達は軽い二日酔いでいつもよりかえって早めに目が覚めて(5時くらい?)、起きあがった後しばらくぼーっとしてから隣を見て、まだ寝てる直江がいて、あれそういえば酒呑まされてそうだそうだ直江にキスしたんだったか、とぼんやり思い出して。ぼーっと直江を眺めてるんだけど、まだ思考もすっきりしないし、二日酔いでだるいし、朝も早いし、コップで水汲んで飲んでから、また布団にもぐって寝る。うんうんずっと悩んでた直江なんかよりも男らしいな、対応が。受けなのに…。
 直江も伊達も目が覚めてからは、別にどちらも夜のことに関しては別段口を出さず、伊達は直江に迷惑かけたことに対しては謝るんだけど。あれ?直江のパターンと一緒だ…。
 昼…昼だな。昼。昼になってから、食事を取りに直江のマンションを出るんだけど、結局昼食はたまり場に行くことにして。道中、伊達が直江に「悪い。迷惑だったか?」と尋ねる。「何のことだ?」と聞いてみると、昨夜のキスのことなのだった。した側の伊達もそれなりに気にしていたようで、全然嫌じゃなかったし当然迷惑じゃないしていうかむしろ願ったり叶ったりな展開でした、ともさすがに言いかねた直江は返答に困り、とりあえず手をつなぐ。何も言わずとも…!そして二人で手をつないだままたまり場まで向かうのだった…。
 たまり場に向かったら、孫市が伊達を心配して飛んできて、「お前大丈夫だったか?!」といろいろかいがいしく世話を焼いてくれる。孫市はさっぱりな昼食とか飲み物とか作って、勝手に三成のつけにするんだ(くのいちは女の子だから、黙認。孫市女の子大好きだし。)。孫市曰く、「三成も実は隠れて左近の仕事を手伝ったりして最近稼いでいるみたいだし、これくらい大した金じゃねえだろ!」と。勝手にね。
 直江は伊達が孫市にじゃんじゃんもてなされてるのを眺めて、内心幸せ感を得てればいいなあ。むやみやたらと。











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初掲載 2007年前期