間奏   ※死にネタ


 武田・上杉を退け、上杉の残兵を駆逐した信長は、いったん、尾張へ戻ることにする。一方、最近幅を利かせている農民に立場を思い知らせるため、信長は見せしめとして、一揆を起こした村の民を撫で斬りするようお市らに命じる。魔王は、軍神のように甘くは無い。
 名指しで命じられた濃姫・蘭丸は、束の間、信長と離れねばならないことに苦痛を感じるが、それ以上の喜びを抱く。
 「いやった〜!信長様、蘭丸、がんばります!」
 「上総介様、濃が成してみせますれば…!」
 しかし、お市はどうなのだろう。信長の目が届かない戦であれば、無理に参軍させる必要もあるまい。濃姫が不安がって義妹を見やると、お市は嬉しそうに、来る殺戮を思って笑っていた。たくさんころせば、きっと、ながまささまはほめてくれる。がんばらなくちゃ。ながまささまがさみしくないように、みんなみんな、じごくにおくってあげるね。
 『フハハハ!進めい!長政と同じ場所に軍神を送れい!』
 ぐんしんだけじゃたりない。もっと、もっと。
 にこりと花のような笑みをこぼすお市に、その表情が長政を失って以来のものであったので、濃姫はもうお市が立ち直ったものと思ってほっと胸を撫で下ろした。










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初掲載 2009年5月17日