正規ルート 小咄:2

1:帰ってきたバカップル(ギグED)

2:ホタルのヒカリ(ダネットED)

3:「ところでキミ、」「駄目です。」(ハーフニィス陣営)

4:テイク1(ガジル戦)

5:テイク2(ガジル界)

































 

1:帰ってきたバカップル(ギグED)


 とある夏の日、ギグとリベアは意気揚々(もっとも、それは主にギグの方だったが)と帰って来た。どうやら無事、結ヶ峰の緋涙晶の呪いは解けたらしい。
 この事態に際して、ダネットは二人の無事を喜べば良いのか、幼なじみを取られたことを悔しがれば良いのか、わからなかった。元々セプーの身で難しいことは苦手なのだ。感情の整理、それも、複雑な類のものの整理など御免被る。
 ダネットは、ギグがリベアに盛んに話しかけては楽しそうに笑うのが気に喰わなかったので、とりあえずの打開案として、ギグを殴ることに決めた。寂しかったのだ。
 「ってーな!てっめ、セプーメス!出会いがしらに何してくれんだコラア!」
 「うるさいです!何ですかそのにやけ面は!どうせ、いやらしいことでも考えていたんでしょう!」
 どうも墓穴を掘ったらしい。ギグは一瞬毒気が抜けたのかダネットの顔をまじまじと見て、それから、おかしそうにあの腹立たしい笑い声を立てた。
 「……くっくっく。そうだぜ?あーんなことやこーんなことを考えてたんだ。なんつったって、今日は、ハ・ジ・メ・テの夜だからな?」
 「なっ、何ですかそれは!外に出たお前、お前に不埒な真似をしたらわたしがただじゃおきませんよ!大体、おっ、お前たちは婚前じゃないですか!いくら本物の愛を証明したからといって、して良いことと悪いことがあるのです!わたしが祭司になった暁には式を挙げてあげますから、それまで、お預けです!!」
 「うっせえ、外野は黙ってろっつーんだよ!つか、てめーが祭司になれるのを待ってたら、日が暮れるどころじゃねーだろ!このダメット!」
 流石にそれには賛成しかねるのか、リベアも頷いた。
 「……気持ちだけもらっておくよ、ダネット。」
 「お前まで……!いっ、いらつきますっ!」
 「うん、ごめん。」
 ギグは、いじけ始めた幼なじみの相手をさらっと済ませたリベアに、こいつも大概ずぶといよな、と内心思った。しかし、実際問題として、この相棒はあれだけ重い運命を課せられていたのだから、それに耐えるにはこれくらいのずぶとさがないといけなかったのかもしれない。
 布団の中ではもうちょっと繊細だと良いんだけどなー、どーだろなー、とギグは今夜のことに想いを馳せた。
 巧く想像ができなかった。
 「……。ま、まあ、呪いも無事解けたし……これで、超抜無敵の最強カップル誕生だな、相棒っ!」
 それまで、三人のやり取りを眺めていたガンツフルトが口を挿んだ。
 「ふん……死を統べる者と世界を喰らう者……。最強というか、最凶かもしれんな。」
 まったくもってその通りだ、といじけながらダネットは思った。


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2:ホタルのヒカリ(ダネットED)


 「……外に出たお前、こんな寒い中外に出てどうしたのです?あいつに追い出されたのですか?まったく、外に出たお前は亭主だというのに、あいつに手も足も出ないではありませんか。あいつの言いなりで尻に敷かれて…無様ですね。可哀相です……ぐすっ。寒いでしょう、せめてもの情けで、わたしの家に入れてあげます……。」
 そのダネットの反応に、玄関先にて、ヤンキー座りで煙草を吸っていたギグが噛み付いた。
 「てっめ、勝手に同情してんじゃねえよ!余計な世話だっつーの!俺は、相棒に言われてやってんじゃなくて、やりたくてやってんだっ!」
 「そんな嘘ついてまで……だって、あんなにわがままでどうしようもない外に出たお前が、いくらあいつにだけは優しいからといっても、居心地の良い家から自主的に出るわけがないのです。……!まっ、まさか、家庭内暴力ですか?!あいつに限ってそんな……!相談に、」
 「んなわけあるかーーーーーっ!!」
 ギグに投げつけられた煙草の空箱をさっと避けて、ダネットは首をかしげた。
 「では、なぜです?」
 「うっせーよ、セプーメス。人んちの事情に首突っ込むんじゃねーよ!」
 「あいつとわたしは家族も同然です!後からのこのこやってきてあいつを掻っ攫った外に出たお前にそんなことを言われる筋合いはありません!あいつとわたしは、互いに互いの赤ん坊の世話をしようと誓い合った仲ですよ!?外に出たお前なんかより、よーっぽど親密なのです。ふふん。」
 「んなっ、誰がてめえにオレ様と相棒のガキの世話を任せるかってーんだよ!そこら辺のノウハウはもう水棲族んとこから仕入れてるし、産婆だってベルビウスのばばあに頼んであっから、もうテメエの出る幕はねーんだよ!残念だったな!」
 「……?ヨストたちのことはともかく……産婆?ずいぶん気が早いですね。」
 「…………。」
 「……!まっ、まさか!」
 「うるせーうるせーーうるせーーーっ!黙れ!すっこんでろ!しっしっ。」
 「そ、外に出たお前!でかしたではありませんかっ!」
 「だーーーー!何も言うなっ!」
 「何でそんな態度を取るのです!めでたいことではありませんか!もっと喜びなさい!」
 「恥ずぃんだよ!はじめてのことでどーしたら良いかわかんねーしよー……。看取るのは得意中の得意だが、こんな……。」
 「みっ、看取っては駄目です、外に出たお前っ。何、物騒なことを言っているのですか!縁起でもない!……まったくあたふたと。これだから男は。……ということは、あいつの体を気遣って、こんな寒いところで煙草を吸ってるのですか?だったら、いっそもう禁煙すれば良いのです。でも……、やっぱりあいつには優しいのですね。ふふ、わたしにはお見通しです!ささ、優しいわたしが暖かい家に入れてやります。感謝するのですよ、外に出たお前!」
 家の中でこのやり取りを聞いていたリベアは、苦笑を洩らした。二人に悪気がないことはわかっているし、むしろ、これは二人の思いやりの結果なのだが。
 「……これで、里中にばれちゃったよね。大声だし……。明日から恥ずかしいなぁ。」
 一つ溜め息をこぼすと、リベアは二人を入れるべく玄関に向かった。


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3:「ところでキミ、」「駄目です。」(ハーフニィス陣営)


 「それにしても一体、この子は今までどこにいたんだろうね。だって、フィーヌ、……それともレシリエンスって言った方が良いかな?ともかく、彼女が倒されたのはもう随分前のことだろ?本来であれば、もうとっくの昔に他に転生しててもおかしくないと思うんだけど……ハーフニィスとお茶でもしてたのかな。」
 赤ん坊をあやしながら尋ねたレナに、リベアは曖昧に笑った。実際、ありえそうで怖い。それか、自分の実体験からすると、この子はゆりかごに入れられて、時満ちるまで待たされていたのかもしれない。
 「あー、それにしても本当に可愛いね。ねえ、キミ。この子には、本当にあのギグの血が流れているのかい?とてもそうは見えないよ。だって、200年前のあいつはそれはそれは怖かったんだ。……ああ、でも、目元なんて良く似てるな。……目付きが悪くならなければ良いけれど。」
 ふと、レナは首をかしげた。
 「それにしても、わざわざ待たせてたってことは……ハーフニィスたちには、キミとあいつがこうなるってわかってたのかな?」
 「……単に面白そうだからじゃ……?」
 「もしそうならキミ、それこそ、一発ぶん殴ってやらなきゃ駄目だよ。」


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4:テイク1(ガジル戦)


 「おや。懐かしい姿じゃないか。」
 「死を統べる者一人で三人の統べる者に勝てると思っているのかしら?」
 「オレは一人じゃねえ。勘違いすんじゃねえ。戦いの時に見ただろーが。召喚されてこの世界まで出張ってくる馬鹿な奴らが大勢オレにはついてる。たった三人しかいねえてめえ等に負けるかよ!」
 「……中のお前……。」
 ガジル界の生死を統べる者とギグのやり取りに、ダネットは思わず言ってしまった。
 「中のお前、ヨストやガンツの親父さんたちはお前についているのであって、中のお前についているわけではありません。それとも、今の発言はお前ですか?お前たちは最近融合しすぎてどっちがどっちだかわからないのです。」
 まさしくそのとおりなのだが今言うべきではない発言に、場が凍りついた。
 「…………ダメット。」
 「誰がダメットですか!わたしはちゃんとダネットという名が……、むむ?今の発言は、もしかして、お前ですか……?」
 そのとおり。だが、肯定することなく、ギグが髪を掻き毟り叫んだ。
 「あー止めだ止め!なんだよてめ、ダメット!いいトコで口挿むんじゃねえよ!」
 「言われ放題ね、ギグちゃん。ああ、おかしい!でも、寸劇ならよそでやってちょうだい。」


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5:テイク2(ガジル界)

 「……馬鹿っ!馬鹿馬鹿っ!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿〜〜っ!!ぜえ、ぜえ……ほら、これだけ言えば……。」
 「……。」
 「なぜです?どうしてなんです?らしくないことするなです……。一人でカッコつけるなです……。……。な、中のお前……、」


 「あー……、大変申し訳ないんだが、療術師なんて呼んでもらえないかな……流石の私も、もう、死にそ……うだ。」


 心底申し訳なさそうに、しかし、さすがに己の命がかかっているだけあってしっかりした主張に、ダネットは何を言おうとしていたのか忘れた。
 「はっ!わっ、忘れてました!大丈夫ですか……っ?!血塗れではありませんか!リ、リタリーを呼ぶのですお前!早くっ!!」
 すっかり忘れ去られた相棒に対して、リベアは本気で憐みを覚えた。


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初掲載 2008年9月15日