赤青妄想   特撮パラレル


 不甲斐無いことだ。伊達政宗は、部下の失態に眉をひそめた。
 政宗は魔王軍四将の一人である。騎馬隊を率いる魔法騎士で、東方一帯を治めている。独眼竜と異名を持つのは守護地が東方であることと、隻眼であることが由来だ。
 政宗はこれまで様々なことをそつなくこなし、秀吉殿下好みの派手な振る舞いに殿下からの覚えも良く、異例の速さでこの地位を築いた。殿下自身外野から自力で伸し上がってきた過去があるので、それも出世に関係していると噂を立てられることもあるが、それは単なるやっかみだ。下位の存在の批難など、政宗は決して取り合わない。気になるのは自領の民と部下、そして、殿下と同僚の言葉だ。殿下に媚を売ってそれで出世しようと思う心はない。政宗に出世欲がないわけではない。最早媚を売ってどうにかなる地位を政宗が望んでいないだけだ。欲するのは殿下の地位だ。
 今朝は早くから軍議がある。その場でこの失態を突かれるのかと思い、今から些か気が滅入った。
 「たかが人間如きに何をしておるのじゃ。」
 同族相手ならばまだわかる。何故、人間如き存在に気高き魔族が敗北するのか。無論、今回政宗が放ったのは直属ではない。先日吸収した軍勢から一人、その者が使えるかどうか見極めるために小手調べとして差し向けた部下だ。だが、人間に負けると思って出したわけではない。魔族の恥と罵倒してやりたい気もしたが、記憶の中の男はそれほど弱い者でもなかった。政宗が直属に迎えるか否か検討する程度には、強い剣士であったはずだ。
 見誤ったか。小さく舌打ちをして、政宗は椅子から立ちあがりマントを翻した。ひとまず軍議で叱責をされるしかあるまい。厳しく追及も受けるだろう。
 最近、殿下は変わった。以前であれば何事も楽しんでかかったものだが、地上の侵略に乗り出した頃から人が変わったような言動が目立つようになった。狂ったのだと言う者もあった。確かに、人間の領域に踏み込むなどまともな判断ではないと政宗も思う。しかし、政宗が下克上を果すまで、殿下の言葉は絶対だ。殿下の望みに応えるしかない。
 同僚である石田三成の皮肉げな笑み、島津義弘の面白がる顔、そして、直江兼続の嘲る眼差し。それらを脳裏に思い浮かべて、政宗は強く唇を噛んだ。この雪辱は早々に果たさねばなるまい。
 それにしても何故、殿下はたかが人間の女如きを欲するのだろう。いくら女好きとはいえ、色に狂うほど愚かな男だったろうか。
 ふとそう思い、すぐさま、政宗は疑問を振り捨てた。考える必要はない。まず殿下の望みに応え、そして、その地位を奪い取る。それだけが政宗の望みだった。


 秀吉が出席しなかったことを抜かせば、朝議は政宗が予想した通りのものだった。
 「ふん。口ほどにもない、お粗末な出来だな。」
 「そう言うな。相手が手練れだったということだろう。負けた者は佐竹の出だというではないか…腕が鳴るわい。」
 出迎え早々放たれた三成と義弘の言葉に、政宗が僅かに片眉を上げた。しかし努めて無関心を装い着席すると、沈黙を守っていた兼続が口を開いた。
 「しかし、この失態。貴様はどう晴らすつもりだ?」
 三成や義弘、そして秀吉の反応より何より、兼続の卑下が一番気に障る。冷徹な目から逃げるように顔を逸らし、それが負けを認めたことであることを自覚した政宗は、面を上げてきっと兼続を睨みつけた。眦はきつく、恥じ入る目元は朱が走っている。
 「この雪辱はわし直々に、すぐ…そう、今日にでも。人間の首級なぞ、わしにすれば簡単じゃ。」
 そう言い捨て、政宗はマントを翻し退室した。抑えきれない腹立ちも露わに音を立てて扉が閉められると、間を置かず、義弘も面白くなったと口端を吊り上げ席を立った。
 開いていた扇子を勢い良く閉じた三成が、親友である兼続の元へ寄っていった。
 「それで、どうするのだ?あれが成功でもしようものなら、手柄もあれのものだぞ?」
 そう告げる声と表情に僅かな懸念と苛立ちを見て取り、兼続は安堵させるように言った。
 「成功すれば良し。ここで政宗が手柄を上げたところで、失態を犯した埋め合わせとでも言えば良い。殿下の評価など、私と三成で後でどうとでも変えられる。」
 「…貴様も怖い男だな。」
 「そう言うな。私たちは親友だろう?」
 「ああ、親友で良かった。」
 再び扇子を開きはたはたと仰ぐ三成を見やり、兼続は小さく、人の悪い笑みを浮かべた。手柄を立てたいという想いより、今は部下の尻拭いとして使われた怒りと己に対する反感で、政宗は戦略を練るどころではあるまい。何より、相手が相手だ。人間如きと舐めてかかれば、生きて帰れるか否かすら危うい。尤も、その矜持の高さゆえ左目を失くした政宗のことだ。人間如き、と舐めてかからぬはずがない。
 「今回の任務、政宗では成功すまい。次の算段を考えねばな。」
 政宗は、敵である織田信長やその妻で奪取が命じられている濃姫の正体を知らないのだ。
 小さく呟いた兼続に三成が僅かに眉を上げたが、どういう意味か問いはしなかった。





 三成のカラーリングを間違えたのが原因で、「みんなカラーリングをしてみよう!」というところから派生した、戦隊モノ妄想ですが、戦隊モノ、というよりは、宇宙刑事かライダーモノを基調とした妄想です。カラーリングは、『戦国無双パラレル部屋』の『絵』『ログ番外編』を参照してください。
 主役は、信長様(白)。ちなみに、喫茶店などを経営しています。奥さんは、濃姫で、バイトが蘭丸。そして、部下(?)兼ライバルのような関係で、光秀。
 敵役は、魔界から地上の制覇を目論む、秀吉たちです。その四天王(初期)に、参謀役でもある兼続(黒)、三成(赤)、政宗(青)、義弘がいます。
 三成と政宗は仲が悪いのです。三成はエンジニアで左近(メカ)を中心にしたロボット部隊、ワイルドアームズFのアルハザードみたいな…(例えが微妙!)。政宗は魔法戦士で、部下は小十郎など騎士系の騎馬隊。
 反目する二人を左近が取り成して、織田一派と闘います。が、当然のように、勝てません。だって相手は正義の味方ですから。
 政宗は仲が非常に悪い兼続にけしかけられて、出撃したりするのですが、あと一歩というところでいつも負けます。一方、三成も政宗に先に手柄を取られてたまるかと先走って出撃して、やはりあと一歩というところでいつも負けて帰ってきます。


 ある日、二人で揃って出撃させられた際に、織田一派にこてんぱんにやられてしまいます。時期的には、1クール目終盤。もう少しで勝てる、というところで、おそらくどちらが止めをさして褒賞をもらうのかでもめたのでしょう。三成と政宗がくだらない喧嘩を始めたところに攻撃を喰らってしまいます。主を部下である小十郎と左近が庇った結果、小十郎は怪我、左近は故障をしてしまいます。
 そんな中決戦(1クール目の)の流れになるのですが、三成も政宗も片腕が負傷中なので出撃することができません。左近は現在修理中。
 そのため、周りが出撃してしまった中、留守番するしかない三成と政宗は、同室にいるのです。「かようなときに殿下の供を出来ぬとは…。」と政宗が嘆くと、「ふん、何を。貴様が裏で、秀吉様が天下を取った後横取りしようとしていることなど、有名ではないか。」と三成が、政宗が秀吉に従ってるのは何も純粋な忠誠心からのみではないことを指摘します。それに対して政宗も三成に、秀吉が倒れた後の天下を狙っているくせにと返し、険悪な空気になります。
 しかし、いつもならば取り成してくれる左近がいないので(小十郎は寡黙で、ただひたすら後ろに控えてる系を想定。)、政宗が先に舌打ちをして、喧嘩モードを打ち切ります。
 「わしだとて、殿下を大切に思う気持ちに変わりはないのじゃ。」
 豊臣の国家転覆以上に、政宗が素直に秀吉を慕っています。その気持ちを聞き、財政やメカのメンテばかりであまり戦働きをできていない三成も「俺だとて、秀吉様のために戦働きをしたいと思っている。」と本心を吐露します。


 そして、2クール目。三成と政宗はわだかまりを捨て、タッグを組んでちゃんと闘うようになれば良いと思います。
 2クール目半ばになると、連携を行ない、策も冴え渡り、その結果、織田一派から蘭丸を攫ってきて、信長と闘うことになります。しかし、所詮は敵役。ヒーローに勝てるはずがありません。蘭丸の危機に、信長と光秀は互いの反目を捨て去り、1話限りの見事な連携で、赤青コンビを打ち破ります。たぶん勝敗を決したのは、赤青のどちらかがピンチになって、そのせいで残った一方の気が散って…という、良くある友情ものパターンです。
 もう完敗した、という思いがあるせいでしょう。止めを刺せという三成と政宗に対し、蘭丸を救出した光秀が、あなたたちの友情は敵ながら美しかったとかなんとかと言います。そして、そのとき、基地が爆破します。
 兼続は織田一派を倒すために赤青を使い捨てにして、新たに四天王を揃えたのです。予想外の展開に、兼続のことを親友だと思っていた三成は打ちひしがれ、元々兼続のことを嫌っていた政宗は舌打ちをするに留まります。


 炎上する基地から命からがら脱出した織田一派ですが、3話ほど経ってから、慣れない人間世界で生活してる三成と政宗を見つけます。遭遇したのは、光秀、蘭丸、濃姫です。三成は小さな町工場でエンジニアをしていて(日本の町工場の技術力は世界一ですから!)、政宗は書店でバイトをしています。
 見つかった赤青は、元々は敵の間柄ですから、正直見られたくない情けないところを見られて固まりますが、織田一派(というより濃姫)に半ば無理やり喫茶店へと連れて行かれ、事情を聞かれ、織田一派と親交を持つようになるのです。
 三成は、兼続が秀吉に赤青死亡あるいは離反と報告していると思われるので、秀吉に直接話を聞いてもらいたいと強く願っています。そして未だに、親友兼続の裏切り行為が信じられず、兼続のことがトラウマ気味です。政宗は別にその辺に関してはどうでも良さそうな素振りでしますが、誰よりも「家」に固執しているようなキャラなので、内心は大変なことになっています。が、それを抜きにすると、政宗は器用なやつなので人間として十分一人で生きていけるのですが、三成がトラウマ気味で見てられないので一緒にいてやっている感じです。


 そうして2クール目は以降、赤青には関係ない展開で終わるのですが、3クール目。3クール目から、赤青が織田一派の味方として活躍すれば良いと思います。最初は陰ながらで、三成は織田一派のエンジニア蘭丸の手伝いをしてやり、政宗は情報を流す感じです。が、外伝的な感じで、赤青主役の回を放送すれば良いのではないかと。
 ある日、バイト帰りの政宗は、豊臣一派に追われているガラシャに抱きつかれ、助けを求められます。明らかに人間ではないガラシャの見目と服装に、事情はわからないながらも、政宗は助けてやることにします。
 そして三成と一緒に暮らしているアパートに帰ると、政宗は三成に、なぜガラシャなど連れているのか事情を聞かれます。政宗は拾った経緯を話し、それから、ガラシャになぜ追われていたのか尋ねます。しかし困った事に、ガラシャは記憶がないのです。
 記憶がないのでは埒が明かない、と思う政宗に、その頃、人間界に流れ着いた際世話になった経緯で経営の手伝いをしている孤児院に身を寄せている小十郎が、ガラシャが身につけていた髪飾りに見覚えがあると言うのです。それが何なのか小十郎は思い出せないのですが、小十郎のことだからそのうち思い出せるだろう、と政宗は気楽に考えます。
 そして、数日が経ち、追っ手と戦闘になります。おそらく、蘭丸と仲良くなったガラシャが、二人で喫茶店の買出しなどに行った矢先、襲われたのだと思います。赤青がすぐさま雑魚を蹴散らしたのですが、これが原因で赤青は本格的に豊臣一派から離反したと思われ、追っ手を差し向けられるようになります。
 が、それがきっかけで、小十郎はガラシャの髪飾りが精霊界の王族の紋章であることを思い出すのです。
 魔族の中にあって、実は、政宗は魔族と人間のハーフなのです。幼い頃は、精霊使いだった人間の母義姫の元にいたのですが、疎まれ、捨てられた後、名門魔族の父の元で育てられたのです。そのため、ハーフであることがトラウマで、特に人間の血を引いていることが厭わしく、必死に鍛錬を積み、強くなったのでした。その過程で、人間の「瞳」だった右目を抉り出して取り除いたりするなど、やんちゃなこともしたのですが、ともかく。小十郎は政宗が、無自覚ではありますが意識的に忘れている幼少期も守り役として傍にいたので、義姫関連で精霊についても多少知識があったのです。
 しかし何故、その精霊と思われるガラシャを豊臣一派が追っているのか。赤青と織田一派は首を傾げます。
 そして精霊について知識を得るため、赤青と織田一派は精霊使いに話を聞く必要性が出てきます。


 兼続は政宗の実の兄だったりしたらどうしよう!と思いました。『犬夜叉』っぽく、魔族より人間な人間の血を引きながら、父に溺愛されている腹違いの弟を、殺そうとしてるのです。愛憎の人ですし、兼続。おそらく、政宗に対する想いには、父に認知されなかった憎悪もこめられていると思います。八つ当たりです。
 現在、『セイント星矢』のサガのようになってしまった原因は、そんな、父に認められなかった己を認めてくれた亡き主(謙信か景勝想定)を蘇らせるためなのです。ちなみに、秀吉が精神を病んでしまったのも、ねねが死んでしまったせいです。
 新四天王には、政宗の剣の師匠で武術にかけては右に出る者のない、そして政宗が部下に欲しがったのですが、兄兼続の部下になってしまった慶次。秀吉の親友孫市に、豊臣に義理があるァ千代、元親というところでしょうか。
 慶次はOROCHIの遠呂智の例を見るように、兼続の最期まで共にいてくれると思います。良かったね、兼続。
 つまり、三伊←直ということでしょうか。


 青赤から話が逸れましたが、2クール目で、織田一派と知り合って間もない頃。
 三成の仕事場に、何らかの用事で、蘭丸と光秀が訪れます。その帰りを見送っていた三成に、出掛けに渡せなかったのでバイト先の休み時間に弁当を届けにきてやった優しい同居人政宗が、「あやつら…できとるな。ホモか。」などと言います。バイト先が書店なので、そういう本も当然取り扱っているのです。
 まだ赤青で出来てないので他人事のように言っていますが、おそらく、3クール目か4クール目で「できる」かと。そんな他人事のような素振りをできるも、今のうちです。





 以下、補足です。
 濃姫さまは、精霊界の女王さまです。光秀は、その従兄弟にして護衛でした。が、うっかり、本来であれば相容れない存在である魔族の、それも王、信長に惚れてしまったものだから、大変なことになります。そのため、二人は王位を退き、人間界で暮らすことにしたのです。
 精霊界の王位には女性が就くのが通例なのですが、それは、女性には子を産む力――創造の力があるためです。濃姫さまやガラシャのような、精霊界の王族は、失ったものを再び蘇らせたり、新たに作り出したりすることができるのです。そのため、大切な人を亡くした秀吉や兼続は、彼女たちを手に入れようと躍起になっていたのでした。
 ちなみに、1クール目で壊れた左近は、ガラシャが直してくれました。工学というよりは生体学に近いのが精霊界の特徴なので、これがきっかけで、左近には心が宿りました。
 そんなことをつらつら考えていて、とうとう収集がつかなくなったのが、この戦隊パロ妄想です。











初掲載 2007年11月
改訂 2008年12月7日