「リンパマッサージを受けてみたい。」
唐突にルシフェルがそう言い始めたのは、地上で言うところの正午を少し回った時刻のことだった。それまでルシフェルは、ぴーちくぱーちく愚にもつかないことを一方的に捲し立てては、まるで某動画サイトや某イラスト投稿サイト・某つぶやいちゃうツール並みにイーノックの作業の邪魔をしており、イーノックはそれらの発言を右から左に聞き流していたのだが、この想像の範疇の斜め右方向の発言には流石に作業を中断せざるを得なかった。
イーノックが地上での奉公を終え、メタトロンとして天へ召されてから早数十万年。
ルシフェルの反抗期は除くとだいたい数千年もの間、ルシフェルのぴーちくぱーちくに付き合わされ、その一方で生真面目なイーノックのこと。愚にもつかない会話についていけるよう自主勉強した結果、未来の叡智についてもいくばくかの知識は得ていた。
さて、リンパマッサージである。
一体、この創造されうるものの中で一番美しい大天使のどこに、老廃物や疲労物質がむくみとなって滞っているというのか。そもそも、基本はアストラル体の天使に、リンパ腺があるのか。
イーノックはまじまじとルシフェルの顔を見つめた。
しゃあしゃあとルシフェルは言ってのけた。
「何だ、その不可解そうな顔は。天使にだってお前みたいな疑似エーテル体になれば、リンパ腺はないが、龍脈のような…アストラル腺ならあるさ。」
つまりは、わざわざ疑似エーテル体にならなければ、その良くわからないリンパ腺もどきは生じないということである。
イーノックは呆れ交じりの視線を投げかけて、作業へ戻ろうとした。むっとしたルシフェルが、頬を膨らませて言う。
「何だ。お前、その態度。だったら良いさ。癒しの天使にでもしてもらうから。」
「…あなたは、アークエンジェルを付き合わせるつもりなのか?」
「悪いか?私は、一度は堕ちた身とはいえ、天使長だぞ。」
えへんと胸を張るルシフェルを前に、イーノックは考えあぐねた。明らかに、ルシフェルのマッサージの強要は、アークエンジェルにとって傍迷惑な作業妨害だ。パワーハラスメント、いや、こんな性的すぎる大天使に強いてマッサージを施さる行為など、セクシャルハラスメントである。
仮に、ラファエルがやんわり断ったとしよう。そうすると、ルシフェルが次にどこへ向かうかは目に見えている。あの行きすぎたブラコンでどうも兄に対する愛情に著しい偏りの見受けられるミカエルは、ルシフェルの申し出を一も二もなく受領することだろう。
ルシフェルの白い肌理細やかな美しい肌に、他人の手が這い回る。
考えるだけでむっとしたイーノックは、今にもアークエンジェルの元へすっ飛んで行きそうなルシフェルの手首を掴んだ。小首を傾げて、ルシフェルが問うてくる。
「お前、自分はやりもしないくせに、他人にやらせもしないなんて横暴だぞ。パワハラで訴えてやるからな。」
「このまま見過ごせば、あなたがセクハラで訴えられると思うのだが。」
イーノックの反論に、ルシフェルの秀でた眉間にしわが刻まれる。嘆息交じりに、イーノックは提案した。
「そのマッサージ、私がしよう。だから機嫌を直してくれないか、ルシフェル。」
こうして、昼中の執務室に鍵をかけ、携帯も電源を切り、ぱちんとベッドを出現させられて、疑似エーテル体で黒い紙パンツだけの半裸ルシフェルにリンパマッサージを施すことになったイーノックだが、ここで一つ断っておかねばならないことがある。
先ほども説明したように、イーノックが朴訥なだけの人間の英雄であった頃から、数十万年もの時間が流れた。しかし、その大半の時間をルシフェルが反抗期に費やしたため、実際、イーノックとルシフェルが親交を深められたのは数千年。
そして、数千年もの月日が流れた今もってなお、イーノックはまだルシフェルと友人以上恋人未満の清い関係だったのである。
ほどよく人肌に温めたオイルを、ベッドへ横たわったルシフェルの白い背へ垂らしていく。当然のことながら、このような真似を初めてするイーノックの傍らには、初心者用のリンパマッサージのテキストが宙に浮いている。イーノックはテキストに意識して目を走らせ、ルシフェルを誤って見ないように注意しながら、掌を使って、仄かにグレープフルーツの香りがする透明のオイルをルシフェルの背へ広げていった。
見よう見真似で、肩甲骨の辺りの薄い肉を優しく上へ押し上げる。すると、鼻から抜ける息を漏らして、ルシフェルが囁いた。
「そこ。羽根の付け根。きもちい。」
思わず、イーノックは手を休め、うっとり眼を細めてマッサージに身を委ねるルシフェルを凝視した。そんな性的な声を出され続けたら、最終的に前屈みになってしまう。
不信がったルシフェルが、イーノックを一瞥した。
「?どうしたんだ?ほら、続けてくれ。」
命じられるまま、背中をさすったり、二の腕を揉んだり、指先をこすっていく。
こうして、背面では、白くほっそりした太腿付近だけが残った。
美しい臀部を覆うサイズの合わない紙パンツが、オイルを吸って、色濃い染みを作っている。それが、マッサージ用オイルではない別の類の何らかの体液に見えて、イーノックは由々しき事態に眉間を摘んだ。やばい。鼻がつんとする。このままでは、鼻血が出そうだ。
ルシフェルに乞われるまま、オイルを大量に垂らし、肌の白さが際立ち匂い立つような色香を漂わせる内股部分に、塗りつけていく。
恋人でもない想い人の玉の肌に、オイルを塗りつけるだけの複雑なお仕事。一体これはどんな拷問であろう。イーノックは遣る瀬無さに襲われながらも、努めて内股の肉の柔らかさを気にしないよう、極めて深刻そうな表情で作業を続行した。
ルシフェルが不満を漏らしたのは、そのときだった。
「…イーノック、ちょっと力が足りないんじゃないか?正直、物足りないんだが。」
それは、内股の肉の弾力を手が覚え込まないよう、表面をさわさわ撫で擦っているだけなのだから、ルシフェルの不満も至極当然である。
「もっと強く押してくれ。リンパ腺に溜まった老廃物を押しやってデトックスするのが目的のマッサージなのだから、それでは、目的に適わないだろう。」
一方的に気持ち良さを甘受しているだけの立場であるにもかかわらず上から目線のルシフェルの叱責に、イーノックは歯を食いしばって、決して、オイルだらけで肌が艶めいているルシフェルの姿を見るまいと天上を見上げつつ、指先に力を込めて、手を上へ動かした。
「ふっ、あん。そこだ、イーノック。そこそこ。」
「…ここか。」
ナデェ。
「あぁ…、そこだ。もっと、して。そこ、きもちい。」
前屈みになりそうな己を律し、むっちりした柔肌に自分の太い指が食い込んでいる感触に気を取られないよう、心を無にしたイーノックは腕だけをせっせと動かし続けた。
せっせせっせと動かし続けた。
あと、少しでこの苦行から解放される。
時計に目をやり、一瞬気を緩めたのが、事故の元だった。
オイルを垂らしすぎて摩擦力の消滅した肌の上をつるっと滑ったオイル塗れのイーノックの親指が、慣性の法則に従って、そのまま内側へつるつるっと進んで行った。ん?とルシフェルが訝しみ、イーノックが青褪めたときには、もう遅かった。
サイズが合わずいささか浮いている紙パンツの横を通り抜け、上へ上へと邁進したイーノックの指が、つるつるな恥丘を押し退けて、にゅぷっと根元まで突っ込む。
ひどく居た堪れない沈黙が、室内に立ち込めた。
事故とはいえ、中に指を突っ込まれたルシフェルは、早く指を抜いてくれと嗜めるべきなのか、このまま何事もなかったかのようにしれっと接するべきなのか、本気で考えあぐねた。突っ込んでしまったイーノックも、ルシフェルと似た心境にはあったが、うっかり招いた失態に呆然としていたので対応に遅れた。
とりあえず、事態を把握しようと手元を見やったのが失敗だった。
天使は無性にして両性であり、イーノックもかねてから、ルシフェルは大体両性のフォルムを選び取っていると耳にしたことはあったが、まさか、幼女のような無毛で未発達の女性の部分と少年のような幼い男性の部分を兼ね備えた存在だったとは。
創世期級の大混乱を巻き起こしている頭は、来たる、抜こうとした親指によって赤い内側の媚肉が捲り上げられ、親指にまとわりついていたものと思われる僅かに泡交じりのオイルが含み切れず秘部からいやらしく溢れている視覚的破壊力に耐えきれなかった。
パリーン!
イーノックの理性が崩壊した。
一度浅く抜きかけた親指を、再び中へ突っ込む。意図して内壁を擦るその動きに感じたのか、びくんと腰を跳ねさせたルシフェルが、ひどく動転した様子で背後のイーノックを振り仰いだ。
「イーノック、お前、何をもたもたしてるんだ。早く抜け!」
「大丈夫だ、問題ない。」
「何が大丈夫なんだ、問題ないわけあるか!早くしないとそれこそセクハラで訴えてや」
脅し文句半ばで新たに差し込まれた人差し指と中指が、中を押し広げようとするように大きく左右に開かれる。
体勢的に目に見えずとも、秘部が曝け出された事実に気付いたルシフェルは、顔を赤らめてイーノックを睨みつけたが、ぱちんと指を慣らされてたまるか、と、肉欲に駆られたイーノックは、ルシフェルの背中の上で両手を押さえつけて、邪魔出来ないよう先制した。
「イーノック!お前、こんなことして」
「大丈夫だ、問題ない。」
「だから、あっ、やっ…!人の話はき、っ、け!」
わざと未発達に作り上げられたルシフェルの中は、農具と武具のせいで節張り太くなったとはいえ、長さはそれほどでもないイーノックの中指で、一番奥まで届いてしまうようだ。イーノックは抜き差しを繰り返しながら、物欲しそうに絡み付く熱い内部を堪能した。
しこりを刺激すると良い、と良く伝え聞くので、腹側にあるしこりをぐいぐい中指で押し上げると、ルシフェルの臀部が愛らしく跳ねた。その下で頼りなくもたげている、己の親指ほどの大きさしかないものの腹を、親指で撫でつけると、あられもない吐息を漏らして、ルシフェルが震えた。
「や…らめ…いぃ、のっ…、あっ!やぁっ!そこ!ふっ、そこが、いい、ん、のぉっ…!」
駄目なのか、良いのか、どっちなのかはっきりしろ。
快感にどろどろに蕩け、満足に頭が働かなくなっているルシフェルに乞われるまま、イーノックは指を動かした。
最早、イーノックのアーチはぎんぎんにそそり立っている。
だが、ルシフェルの中があまりに狭い上、奥行きも中指ほどしかなく、どう思考錯誤しようと、イーノックの並外れて巨大で規格外のものを受け入れることができないのは、一目瞭然である。
イーノックは与えられる快楽で柔肌を桃色に染め上げ、まな板の鯉のようにされるがままになっているルシフェルの紙パンツを、膝下までぐいとずり下げ、その上へ覆いかぶさった。
白く泡立つ体液でべとつき糸引く指を中から引き抜くと、腰を掴まれ尻を突き出す姿勢を取らされたルシフェルのぬれぬれの秘部へ、ぎんぎんにそそりたった凶悪なアーチを押し付ける。
そのまま、イーノックは腰を動かし始めた。
オイルと愛液でぬるぬるに濡れた恥丘と、小さいながらも腹に付きそうなほどそそり立ったものへ、イーノックの凶暴すぎる熱塊を擦りつけられるルシフェルの腰が、不完全に与えられる快楽をむずがるように細かく揺れる。イーノックは息苦しそうなルシフェルの手の戒めをなくすと、オイルでぬるつく腰を鷲掴み、勢い良く腰を打ち付け始めた。
気持ち良い。
気持ち良いことは気持ち良いのだが、やっぱり、どこか物足りない。
振り落とされまいとベッドにしがみつくルシフェルの高々と突き上げられた小振りの尻を眼にしたイーノックは、良案を思いつき、オイルへ手を伸ばした。
滴るほどオイルを垂らし、美しい桃色の穴へオイルと愛液でぬるつく中指を挿入する。ここは、消化器官として用いていないとはいえ、普通の人間と同じサイズに作り上げられているのか、奥行きも問題なさそうだ。
快感に陶然としていたルシフェルは、あらぬところを弄られている事実など全く意に介した様子もなく、イーノックの律動に合わせて腰を振っていたが、流石に三本もの指がずぼずぼ不躾に挿入される頃になると、気にし始めたらしい。
「いーのっ、くぅ!らめ!そこ、へんっ…!な、きもちに、なっちゃ…あぁん!やらあ…!」
半べそで舌足らずのルシフェルの言葉に、とうとう、イーノックのアーチが爆発した。同時に、腹部を白濁したもので汚されたルシフェルも大きく身を震わせて、愛らしくそそりたったものを脈動させる。しかし、あまりに幼すぎるのか、射精には至らないようだ。
イーノックはアセンションしたばかりにもかかわらず未だがちがちに硬度を保っているものを、ルシフェルの幼いものを労うように擦りつけてから、入念に解したいやらしい穴へ当て、腰を進めていった。ルシフェルの柔らかい場所は特に反発するでもなく、イーノックの肉棒をねっとり優しく包み込んだ。
収めきった瞬間、眦を赤く染めたルシフェルが舌足らずな声で、イーノックの手に己の手を絡め、そこへと導きながら強請った。
「いーのっく、まえ、まえもいじって。」
もちろん、イーノックに否やはない。イーノックは解す役目を終え、手持無沙汰になった手で、哀れにもひくつく女性の部分を慰めてやりながら、ルシフェルを揺さぶった。ルシフェルが悩ましい声を上げて、イーノックの放埓な腰つきに喘ぐ。
ふと思い立って、平坦な胸をまさぐって見付けた乳首を引っ張ると、ルシフェルの涎塗れの口から嬌声が飛び出した。仕返しとばかりに内部を締め付けられ、不覚にもアセンションしてしまう。同時に、熱い飛沫を受けたルシフェルもアセンションしたらしく、身体を弛緩させてベッドに崩れ落ちた。
その身体を引き起こしたイーノックは、今度は膝の上へルシフェルを座らせた。ぷっくり脹れあがって自己主張する乳首を苛めながら、下から乱暴に揺すり上げてやると、過剰に与えられる快感にルシフェルが啜り泣いて身も世もなく悶える。
さっきから全く弄られていないにもかかわらず、どろどろに濡れた女性の部分は、恥丘から白濁塗れの赤い媚肉を覗かせて、ぴくぴく脈打っていた。
結局、二人の淫らなマッサージが終わったのは、夜も更け、隣室からうるさいと苦情が入った頃だった。
そんなこんながあって、順調に賢者タイムに突入したイーノックの元へ、再びルシフェルが顔を見せたのは、1週間後のことだった。
なぜか、女体版だ。
長い黒髪、豊満な乳房、手折れそうな腰に華奢な肉付き。賢者タイム真っ盛りのイーノックは、得意げにポーズを取るルシフェルへ胡乱な眼を向けた。一体何の目的があって女の気分なのかわからないが、自己嫌悪にどっぷり浸っているイーノックは、とてもではないが、ルシフェルの気紛れに付き合えるような気分ではない。
ふいと視線を背けるイーノックに、ルシフェルは不満そうに頬を膨らませた。
「何だ、その態度。お前のためを思ってこのフォルムにしたのに、何が不満だ。言ってみろ。」
正直、意味がわからない。何が自分のためなのか戸惑い、視線で説明を促すイーノックに、ルシフェルは人差し指を立ててふふんと鼻を鳴らした。
「説明しよう。これは、人間の女と同じ機能を備えたフォルムの疑似エーテル体だ。つまり。」
「つまり?」
「お前がこの前あれだけ固執して入れたがっていた女性器も、ちゃんと成熟した女性のフォルムになっているから、入れることが出来るというわけだ。」
賢者タイムの原因をさらっと言及され、顔を白くして絶句するイーノックの方へ身を乗り出し、ルシフェルがにっこり微笑む。
「わざわざガブリエルに女性ホルモンの作り方から教わって、これでも結構苦労したんだぞ。ほらほら、触ってみないか?触ってみたくないか?女性体、初めてにしては結構巧く出来たと思うんだ。」
眼前へ突き出され自己主張する乳房を押し退け、イーノックは問いかけた。
「…イズメルは。」
むっとして、ルシフェルが答える。
「あれはノーカンだ、ノーカン。」
よほど自信作の乳房を退けられたことが不満だったのか、むにっと意外と張りがあって固いそれを顔面へ押し付けられ視覚が遮られた瞬間、ぱちんと音が鳴った。
「この前は、隣室から苦情が入ったからな。私の部屋だったら、あんなことにはならないだろう。」
良くわからない説明を捲し立てながら、まったくさりげなくキングサイズのベッドへ押し倒され、腰の上へ乗っかられたイーノックは眉をひそめた。
「…ルシフェル?」
ルシフェルが乱暴にイーノックの法衣を剥ぎ取り、自分の透けシャツも脱ぎ捨てながら、あっけらかんと言い放った。
「この前の礼だ。今度は、この私が特別にお前にマッサージしてやろう。」
返事を待たず、ぱちんという音と共に出現したオイルを塗りたくられる。褐色の肌の上に白い手が翻る様が卑猥だ。ごくりと咽喉を慣らすイーノックの様子に満足したルシフェルは、悪戯を企む子供そのものの顔つきで、身体をゆっくり下方へとずらしていった。
一番良い装備にルシフェルの魔の手がかかる。やがてジーンズのファスナーが下ろされると、想像されうる展開に興奮して勢い良く飛び出したアーチに、ルシフェルが大量のオイルを垂らした。
「ふへっ。いくら聖人面してたって、お前が本当はおっぱい星人だって、知ってるんだからな。」
その発言に顔を赤らめ、上半身を起こしたイーノックへウィンク一つすると、ルシフェルはへずいと乗り上げさせた乳房で凶悪なものを挟んだ。
「んっ…思っていたほど、上手くいかないな。経験値不足か?」
そういうルシフェルのジーンズに覆われた小振りな尻は、行為のこつが呑み込めていないのか、上半身の動きに呼応してふりふり揺れている。
オイルでぬるぬるの赤黒い肉棒が、白い谷間を行きつ戻りつする。言葉を失くしたイーノックの凝視に気付くと、ルシフェルはセクシーアピールするように既に白い体液が滲み出ている先端へ赤い舌を走らせた。そのまま、竿を食まれ、軽く吸い付かれたかと思えば、ずっぽり呑み込まれる。
いくら視覚的暴力に屈し、呆然としていたとはいえ、イーノックが、不慣れさから揺れるルシフェルの尻の動きが、不満そうにもじつき、何かを耐えるように擦りつけるものへ変化したのに気付いたのは、そう間もないことだった。
ジーンズ越しに触れれば、厚い生地を通してもわかるくらいじっとりと濡れている。
イーノックは恥じらうように頭を振るルシフェルのジーンズを引き摺り下ろした。ジーンズへねっとり糸を引き濡れそぼるそこは、つるつるの無毛のままだが、幼さばかり際立った前回と異なり、成熟した女性のものへ変貌を遂げている。試しに肉厚の花弁を押し分け中指と人差し指を差し込むと、内部はすでに下準備が不要なくらいぐっしょりと濡れ、一番奥へ届くこともなかった。薬指も難なく呑み込んだそこは、物欲しそうに絡み付き、イーノックの指を逃すまいとする。
「んんっ。イーノック、触るなら、もっとっ、ちゃんとやれ。」
不満げな声が聞こえたと思えば、ルシフェルが身体を反転させたのか、眼前に赤く充血し、しとどに濡れた秘部があった。内股にまで、甘そうな体液が伝い流れている。
むわっと立ち込める雌の香りに頭がくらくらして、イーノックは欲望のままにむしゃぶりついた。鼻先を押し当てなるべく奥深くまで舌を差し込み、甘露を啜ると、歓喜に震える白い太腿がむっちりイーノックの顔を挟み込む。イーノックはこのまま窒息死しても良いと思った。
乳房で挟むことは断念したのか、白くたおやかな手で握り込み上下にする動作を施しながら、ルシフェルがイーノックの巨大なアーチに舌を這わせ、尿道を穿るような舌使いをしては、翻弄する。
反撃とばかりに、イーノックはルシフェルの愛らしい肉芽を摘み、皮を引っ張った。腹部へ押し付けられたルシフェルの乳首が固さを増し、感じているのだと無言のうちに知らせて来る。細かく腰を振動させ、えずかない程度にルシフェルの口内を蹂躙すると、鼻で甘い吐息を漏らすルシフェルの指がオイルで濡れる下生えへと絡められる。
射精感にせり上がる玉を握られ、やんわり揉み込まれた瞬間、己のアセンションを悟ったイーノックはルシフェルに強く吸い付き、その肉芽を捻り上げた。
「アッーー!!」
ぎゅむっと顔を挟まれ、同時に、生暖かい液体が勢い良く顎にひっかかる。一瞬、ルシフェルが粗相したのかと変な昂揚を覚えたイーノックだったが、はたと、ルシフェルの排泄器官がそういう意味で活用されることがない事実に思い至り、冷静になった。
では、何だろう。
指先で拭って舐めてみると、ルシフェルのものだからか、どこか甘い味がする。後を追うように中から溢れ出した白い愛液を見て、ふと思い当たるものがあった。
「潮を吹くなんて、あなたはとんだ大天使だな。」
急にメタトロンスイッチ(S)が入ったイーノックに、肩で息吐くルシフェルが顔をしかめる。
「お前、さっきまで落ち込んでいたかと思えば、天狗になって…性質が悪いぞ。」
「だが、あなたは、そんな私を気に入ってくれているのだろう?」
「…人の話を聞かないのは変わらないな。」
ルシフェルの腕を引いて起こし、前回のときは失念していた熱いキスをする。口蓋をくすぐり歯列を舐めると、疼く腰を震わせたルシフェルが、イーノックの肩へ手を置き、いきりたつアーチにぐちょぐちょの秘部を擦りつけた。
乞われるまま、ずんと突き上げる。
背を仰け反らせて善がるルシフェルの乳房へ手を伸ばし、鷲掴んで乳首を摘み上げたイーノックは、ぴゅっと勢い良く飛び出たものに、思わずメタトロンから素に戻った。
「ル、ルシフェル、何だこれは。母乳、なのか?」
道理で、乳が張っていて、想像していたよりも固い感触なはずだ。
「んっ、女性ホルモンが多すぎたのかもなっ、ちょ、んんっ!お前っ、そっれ、はんそく…っ!」
忙しなく腰を動かしながら、舌と手を駆使して、牛の乳絞りの要領でルシフェルの乳を搾っていく。ルシフェルはイーノックの黄金の髪に指を絡め引き剥がそうとしたが、上手くいかず、最早、引き剥がそうとしているのか押し付けているのかすらわからないありさまだった。
あらかた絞り取ったところで、ルシフェルの乳房を揉みしだく。食い込む指に添って形を変え、本来の柔らかさを取り戻した乳房に気を良くすると、知らない間に何度かアセンションしていたらしく股間をびしょびしょに濡らしているルシフェルへ、腰を打ち付ける作業に専念することにした。
快感に疑似エーテル体が馬鹿になっているのか、ぴゅっぴゅっと律動に合わせて愛液を飛び散らせるルシフェルが、羞恥心に戦慄きつつも、涎を垂らしてイーノックの名を呼ぶ。
何となく、子供が生まれたばかりでようやく寝かしつけた後、隣室で子供が飲みたがらなかったから張って仕方ないという妻の乳絞りをして、ハッスルハッスルしてしまう若夫婦…という妄想を滾らせたイーノックは、つんと痛む鼻頭を意識しながら、強請られるまま、妄想の中のでは妻であるルシフェルにキスの雨を降らせた。
こうして、オイルの力など借りずとも、前回に負けず劣らず、ぬれぬれぐちょぐちょに乱れ切った事後。
疲弊しきったルシフェルの身体を抱きかかえたまま入浴していると、少し恥じらった様子でもじつきながら、ルシフェルがちらりと背後のイーノックを見やった。
「その…。あのな…?んー、その。言っていなかったが、イーノック、お前のこと、ちゃんと好きだぞ…?…って、何でお前の、また、大きく…!?」
子供が生まれたばかりでようやく寝かしつけた後、隣室で子供が飲みたがらなかったから張って仕方ないという妻の乳絞りをして、ハッスルハッスルしてしまう若夫婦…という妄想が現実になる日も近いようである。
初掲載 2011年11月6日