光秀と魔法のランプ   現代パラレル


 この日、光秀はひょんなことからランプを手に入れた。ランプといっても火を灯すカンテラのような類のものではなく、アラジンなどに出てくるあのランプだ。別に欲しいと願って手に入れたわけではなく、気がつけば片言の日本語を操る露天商に買わされていたのだが、カレーを入れるのに丁度良さそうな気もしたのでまあ別に良いかとも思った。
 基本的に、光秀は面倒臭いことが嫌いだ。掃除洗濯は勿論、他と隔ててとりわけ好きな食事でさえ、料理が面倒臭いがゆえに外食かコンビニ食で済ませている。感情を示すのも面倒臭いから嫌いでその上感情表現も苦手だったので、露天商に文句を言う気にもなれなかった。そんな光秀が、手に入れたとはいえランプにわざわざカレーを入れて食べてみようなどと思ったのは、一週間前光秀の生活を心配してマンションに訪れた従兄弟の濃がカレーを冷凍庫に作り置きしていってくれたからだった。濃のカレーはグルメ通の光秀も満足するくらい美味しいし、何よりランプを見てから光秀の食事気分は大いにインド料理に傾いていた。だから、光秀は面倒臭い自炊をすることにしたのだった。
 そういうわけで光秀は帰宅するとすぐさま、空腹を抱えてランプを手に取った。カレーを入れるためには、面倒臭いがランプをまず洗わなければならない。
 いつの時代のものなのか。まず骨董と称されるであろうランプは酷く埃に汚れていた。衛生上、もしかしたらランプにカレーを入れることは諦めた方がいいのかもしれない。そんなことを思いながらも、光秀はとりあえず傍にあったタオルでランプを強く擦った。
 ボフン、と聞いたこともないような音がした。
 湧いて出た煙に包まれながら、ランプが爆発でもしたのかと光秀はいぶかしんだが、どうやらそういうわけでもなさそうだ。ランプは依然として、光秀の手の中にあった。
 やがて、煙は晴れた。
 『お前がmy lordか。』
 光秀は、目の前に浮かぶソレを見た。感情表現の乏しい光秀にしては珍しく、驚いて瞳を見張っていた。
 『俺は伊達政宗。ランプの精だ。』
 願い事を3つ叶えてやる。
 ふわふわと浮かびながら偉そうに踏ん反り返って言い放った小人に、光秀は一体コレは何のドッキリなのだろうか、と誰が光秀に対して仕掛けるのか定かではない考えに思いを馳せるのだった。











初掲載 2006年10月31日