何故気付いてしまったのだろう。
思って、佐助は胸中で溜め息を吐き、天を仰いだ。木の葉の合間から覗く空は小さく、けれど青く光って輝いている。
あんなところに惹かれたのかね。
小さく呟き、そうではないと思い直した。あの人は、とても、枝葉に隠れてしまうようなたまじゃない。もっと鮮烈で、何もかもを根こそぎ薙ぎ払って平らげて何処までも貫くような潔さがある。佐助はあまり好きではないので認めるのは大いに癪だが、それは事実だ。認めざるを得ない美点である。
だからこそ、惹かれたのかねえ。
佐助は再び心中溜め息を吐き、赤い顔でいる主を見やった。
何故、気付いてしまったのだろう。あんな視線、気付かなければ良かった。
その先には竜の旦那。
初掲載 2007年8月