一年前、厳島にて。
「真田の忍がすげえ働かされててよ。特に伊達に。いくら主の情人っていっても、あれは流石になあ。あれに比べればお前のところもまだ優しいなって思ったぜ。」
「ふむ、そうか。我もまだまだよの。では、明日からは、更に駒の利用に磨きをかけねば。」
「謀反が起きないようにな。」
十ヶ月前、前田領にて。
「犬千代様。なんでも、真田様はあの空を飛んでいた忍びの働きによって、恋を成就なされたそうでございまする。相手は、かの伊達様とか。」
「それは立派な忍びだなあ!そうかあ、あの空飛んでた橙のかあ!」
「武士にあらざるとはいえ、主君のために奔走する…まこと天晴れでござりまする。」
半年前、京にて。
「慶次、知ってるかあ。何でも真田の橙の忍びはな、恋を叶えたそうだぞ!」
「?何の?」
「主の真田と…確か…。其、あまり北には詳しくないからなあ。」
「はっきりしねえなあ。まつ姉ちゃんいねえの?」
「まつは濃姫さまと買い物中だ。えーっと。北のすごい人だ。まつほどではないが美人だった!」
「身分違いの恋ってこと?それを叶えるなんて凄いじゃないか!何が秘訣なんだい?」
「忍びが叩かれて恋を叶えたって聞いたぞ、確か。」
四ヶ月前、陸奥にて。
「良い田だ…さぞ良い米が取れるだろうぜ。」
「えへへ。これも全部あんたら伊達のお侍さんのおかげだべ!」
「礼なら政宗様に伝えるんだな。そういや嬢ちゃん、知ってるかい?何でも、あの真田の佐助とかいう橙頭した忍いるだろう。」
「うん、あの緑の服の人だべ。」
「そいつを叩くとな、野菜とか米がよく育つらしいぜ。」
「…!そういや、今年はあの人と戦って槌で叩いただよ!だから今年はこげな豊作だべか!」
「まあ、そんなの嘘で政宗様のお陰だけだろうが…。」
一ヶ月前、米沢城にて。
「政宗、知ってるだか?あの人を叩くとな、願いが叶うんだべ。」
「oh、そりゃまた面白い話だな。(ホントだったら俺は今頃天下人だ)…そういえば、南蛮にも歌があってな。ポケットを叩くとビスケットが増えるんだぜ。今度試してみればいい。幸村、お前甘いモノ好きだろ。」
「びすけと…?(とは何だ?)ふむ、今度試してみるでござる。」
初掲載 2006年9月25日
改訂 2007年9月19日